”日光といえば結構”

竹野タクシーは国道4号線を北上していた 千住大橋を渡る頃には水温計も安定して来た 助手席には牡丹がお座りしていた清は夢心地でハンドルも軽やかであった 北関東あたりへ向かうトラックの運転手らは信号待ちで横に止まる竹野タクシーの車内を見ると口をあんぐりした 運転帽からドル紙幣がはみ出る運転手の横には紅の縮緬の着物の女がバナナを食べており後部座席にはナマハゲのお面を被った裸の男と頭に手拭いを巻いた左頬にキの字の傷のある男が乗っていたからであった

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