”店長”

レインボー丸は小春日和の爽やかな陽を浴びながら船底のペンキ塗りの様は平和そのものだった　トランジスタラジオは昨日の春一番のニュースで銀座の並木通りの柳が一本折れたことを報じると　ペンキ塗りの刷毛をペンキ缶に置くと舵木弦三は塗り残しの確認をした　この春に恋人の七色虹子が仁天堂大学医学部を卒業するのでレインボー丸の船長は卒業式観覧の約束をした　だが背広を持っていなかった　とっくりセーターに雪駄履きで銀座へと向かった　鮫島貿易の社長の紹介でテーラー島田を勧められたからだった