”名は体を表す”
昭和画廊の長椅子に腰掛けてムッチリとした太腿から黒い絹の靴下が膝小僧を透けて見せる美人オーナーは掛け軸の題名を絵師に尋ねた 題名は物事を区別するのに適した言葉でなければいけないと過去の経験から悟ったのだ 桃川が画学生時代に写生旅行で京都を訪ねたときの若気の至りの苦い思い出があった 清水寺の参道で八つ橋の売り子をしていた娘に声をかけ ねえねえ珈琲でも飲み行かない?と軟派したところ二つ返事で了解の京美人の娘に喫茶店で話に花が咲いた 明日から舞子になるという娘が こんど京都にくる時は金閣寺や銀閣寺に案内してくれるという約束を交わした 若かったアタシは金閣寺や銀閣寺なる名称の場所がてっきり連れ込み宿の店名だと興奮していたが 後でそれが有名な観光地の名前であると知ったのは痛恨の極みでありました