”運転手”

清は竹野タクシー時代を想い出していた 秋の夕方だった土砂降りの新橋からお客を乗せて吉原へとタクシーが向かった 日本堤の御茶屋の前には遣り手ばばあが手招きをしていた お客は遣り手ばばあを見つけるとタクシーを止めると御茶屋へと入って行った 御茶屋の前で清は乗車表に運賃を書き込んでいたとき蛇の目傘の女郎が通りすがりに清へ飴玉を手渡してご苦労様と微笑んだ 清はからかい半分に どこの店だい?こんどの給料日に遊びに行くぜと粋がった 女郎は竜宮城だと返した それが牡丹との出会いだった

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