”名物”

屋台のラーメンの仕込み所兼屋台の駐輪場は銀座の北の入り口の京橋に借りていた もとは竹細工の職人の工場兼住居で江戸時代からある長屋式の仕舞屋を柳連隊長率いる屋台のラーメンのアジトにしていた 焼豚を燻している香いを嗅ぎつけて近所の住人やサラリーマンが寄って来ては購入希望した 最初のうちは向こう三軒両隣程度ならと譲っていたが人の噂は広がっていき焼豚製造販売店として出張帰りの土産品としても全国へと運ばれ美味い焼豚と知る人ぞ知る京橋名物と噂されていた 焼豚は日持ちもするし見た目も重さもどっしりしていたので貰う側も原始人よろしく野生的な見掛けに喜んだ それでも普段は擦りガラスの引き戸には屋号すら書いてないアジトだったので近所の家には道を尋ねる人が度々で近所迷惑だがそこはお節介焼きの下町文化もあって提灯屋の親戚がいるご近所さんが焼豚と書かれた丸提灯を持ってくるなり焼豚購入希望の行列ができるまでになったのだった

22/08/19 06:44:22
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